客観的な考証・比較を目指して(タミヤ1/48 Me262・・・の箱絵)

 先日めでたくタミヤからメッサーの262が1/48で発売されました。 出来の方は(パーツを見たかぎりでは)私なんかにゃ文句のつけようが無いほどの素晴しいものです。きっと完成したら素晴しいメッサー262が出来上がることでしょう。
 しかし、店頭で初めて手に取ってから何となく感じていた違和感・・・ボックスアートの事について触れたいと思います。
 キットの完成画像やテストショットなどは、WEBや雑誌等で紹介されるので多くが発売前に公開され、ある程度想像を膨らます余地があるのですが、ボックスアート(箱絵)に関してはタミヤの場合ほとんど発売前には公開されず、模型店で初めてお目にかかると言うのが普通ですよね。
 これは私にとって実際にパーツを見るよりも、ある意味楽しみな事なのですが、262の場合は「あ、こんなのなんだ・・・主役はケッテンかい?」程度の感想しかありませんでした。
 しかし帰宅して改めてよく見ると、どうしてもケッテンが大きすぎる様に感じます。メッサーが小さいとも言えますが、いずれにしてもメッサーとケッテンの大きさのバランスが合っていないように感じました。
 第一印象のオモチャっぽい感じはこの辺から来るのかな?なんて考えてましたが、これを機に以前から考えていた、3Dソフトを使用してスケールモデルキットと実機写真の比較方法を試してみることにしました。

 考え方としては別に難しいことでは無く、3Dソフトで作ったモデルを箱絵の様に見えるポジションに配置してアングル、画角等を調節し、3Dモデルが本当に箱絵の様に見えるかシミュレーションしてみようということです。
 私の使用している3Dソフトは「Shade」という老舗のソフトで、この業界にしては珍しい日本生まれのソフトです。
もちろんカメラの広角<>望遠の設定は自由に出来ますし、何と言ってもカメラビューのウィンドウに画像を下絵として読み込める点が素晴しいです。<他の3Dソフトはほとんど触ったことが無いのでこの辺の機能があるかどうかは分かりませんけど・・・  

画像クリックで拡大します  
 まずは比較元となる箱絵をスキャンします。大きいので2回に分けて後でつなげてあります。絵のタッチはプロっぽくってそれなりに高品質感?もあるのですが・・・
 箱の側面にある側面図もついでにスキャンします。これと比べても箱絵のケッテンは大きいイメージですよね?
 3Dソフトでモデルを起こす為に必要な情報をあちこちから引っ張ってスキャンします。上面図はインストから、側面図は箱から、正面図と胴体断面図はMA別冊のMe262特集からスキャンし、Photoshopで各々の大きさを統一して一枚の画像にし、下絵とします。次にドローソフトで下絵を開き、機体を構成する面や線を描き起こしていきます。Shadeでも下絵からトレースして図形を起こせますが、使い慣れていないのと精度の点でドローソフトを使用しています。 左の画像はドローソフトで材料をトレースし終わった状態です。慣れればもっと速く出来るでしょうが、大体スキャンからここまで1時間位の作業です。
 いよいよShadeにドローデータを読み込みます。Shadeの場合、ドローデータをそのまま輪郭、あるいは面として利用できるのでIllustratorやFreeHandに慣れた私には扱い易いです。これらの線データを伸ばしたりつなげたり回転させて立体のモデルを作っていきます。
 ほとんど掃引や回転と言った基本的な操作のみで作り上げたケッテン。
 今回は大きさの比較用なので細かい形状は無視し、なるべくプリミティブな形状のみの組み合わせで構成しています。<私の技術ではまだ複雑な形状は作れないと言う理由もありますが・・・
 ただ、ドローソフトで線形状を作成するときに、Shadeでどのように組み立てるかを考えながら 考えながら配置・描画する様には心がけています。
 こちらがメッサーです。翼はただの平面です。これじゃ飛べませんね・・・ 胴体とキャノピーは各断面形状を自由曲面で適当につなげて作りました。
Shadeでの作業も大体1時間位でしょうか?ま、簡単な形状のみですから・・・

 ここでShadeの下絵用にPhotoshopで加工したモノクロ画像を、テンプレートとして透視図へ読み込みます。カメラウィンドの視点・注視点・ズームをなるべく下絵に合うように調節していきます・・・が、思った通り3Dモデルがケッテンとメッサー両方に合致するアングル・画角は探せませんでした。取りあえずケッテンに合わせたアングルでレンダリングしてみます。設定した焦点距離(=画角)は69mmです。
 イラストの方はメッサーの主脚の位置とケッテンはほぼ合っていますが胴体とエンジン部が一回り小さいです。

 レンダリング画像です。箱絵と比べると大きさのバランスはさすがに自然な感じがします。箱絵のは特に尾部が小さめで、下にさがりすぎているようです。

 

 

 次にメッサーに大きさを合わせてフレーミングを調節してみました。ケッテンはだいぶ小さくなってますね。メッサーの機首・エンジンポッド前後端・尾部・脚の位置等はほぼ合っていますが機体の傾き(ノーズがやや上がっている)は合わせてません。
焦点距離は80mmで視点が少し右上へ移動しています。
 同じくレンダリング画像です。これもバランス的には印象通りで違和感はありません。
どうせならと機体を複製し、箱絵の構図になるように並べてみました。
 同レンダリング画像です。トリミングが箱絵と違いますが、却って箱絵の窮屈さが分かる結果となってませんか?
 参考までに上の状態を真上と真横から見た状態です。各機体が向きを変えてほとんど一直線に並んでますね。 後方を飛ぶ2機もやけに低空を飛んでいることが分かります。(笑)
 尾翼上端まで約4mなので、後方を飛ぶ2機はわずか高度12mの所を飛んでいることになります。
この辺りはなかなか見ただけでは分かりにくい部分なのですが、シミュレーションしてみると一発で分かりますね。
 もちろん絵作りと言う部分でこう言った不自然さを否定する気はありませんが、恐らく描いたイラストレーターはこの辺のパース的な意識が希薄だったのでは?と思います。
 どうしてこの様になったのかを私なりに想像してみましたが、やはり現存するケッテンとメッサーのなるべく角度の合う写真を組みあわせて下絵とし、苦労して自然な見えがかりにしようとした為ではないかと思います。 国内で唯一CADーCAM設備を有しているタミヤにしてはボックスアートへの利用を考えていないようで以外に感じました。製品そのものの3Dデータがあるのですから、ベストアングルを探してワイヤーフレームでレンダリングし、イラストの下絵とするなんていう、建築パースの世界では10年前から常識になっている手法を取り入れないのは何故なんだ?と疑問に思ったりします。
 ちょっと角度を変えて広角気味(46mm)にレンダリグすればもっとマシな絵柄が得られるのに・・・とは思いませんか?これがベストとは言いませんが、一つの売りであるケッテンは目立つし、メッサーの特徴あるオニギリ型の胴体断面も良く分かり、結構迫力のあるアングルだと思いますけど。
 


  ・・・で結局何が言いたいのかと言うと、決してタミヤや箱絵のイラストレーターへの文句ではありません。

 実はここからが本題なのですが、この方法が実機とキット(あるいは図面)を比べる時にもそのまま利用できるのでは?ということです。
 以前スケールアビエーションに隼の実機写真にキットの側面形を重ね合わせて比較した記事が載っていましたが、キット(あるいは図面)から採寸、スキャンして3Dモデルを作り、3Dソフトで同様に写真に重ねてアングルを探れば何処が違っているのかをもっと把握しやすいのでは?と思っています。
 もちろんシミュレーションですから実際のレンズの微妙な歪み(歪曲収差?)やレンダリングの精度も問題になりますが、少なくとも模型と写真を見比べて云々するよりはよっぽど客観的で説得力のある比較が出来るのでは無いかと思います。
 もちろんそのためにはもっと正確な3Dモデル作りと、撮影時のカメラの仕様・状況等に詳しい事が必要ですが、この方法ならなるべく鮮明な写真を探しだせれば、今までのように真横とか正面というアングルにこだわらずに、それこそ立体物同士である程度正確な比較が出来ると言うことです。

 出戻ってからずっと「きっと誰かがこんな事やっているんだろうな〜」と思っていましたが、今までこの様な方法で比較をされている方を見たことがありません。
 3Dでリアルなモデルを作っておられる方は大勢居られますが、プラモ的に比較・考証となるとやはり狭い世界になってしまうのでしょうか?
 私も以前3Dソフトで模型的な作り込みに憧れた一人ですが、所詮はバーチャル・・・実際に手で触れないもどかしさから早々にあきらめたというのが、模型の世界に出戻った一つの理由でもあります。
 現在スピットの一番評判の良い図面から3Dモデルを起こし、いろいろな写真と比較しながら3Dモデルを修正後、再び図面にフィードバックしてキット制作の参考に・・・なんて事を考えてますが、どうなることやら・・・  でも胴体・翼断面形や微妙な面のつながり等はどうしても3Dじゃないと客観的に比較は難しいと思うのです。
まずは正確にスケールダウンした実機のモデルありき・・・らしさを表現するデフォルメ表現はそれ以降の問題と考えます。
 私はカメラには詳しくなく、戦時中に撮られた写真の数々がどのようなカメラ・レンズ(画角)で撮られたのか?と言った点に全く不案内なので、その辺りの情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非ご教示願います。
 同時に信頼できる図面関係(Bf109やドーラなら阿部さんと言うことになるのでしょうが)の情報もありましたら教えていただきたいと思いますので、詳しいお方は是非よろしくお願いいたします。

 うーん今回はやけにマジメだなぁ〜。今度から考証はこうしよう・・・なんちって (@_@)\バキッ(^o^)。

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